
前回(Vol.2)は、Hex Codexが勝利条件として道具が不要で直感的なカードカウント方式を採用した、という結論をお伝えしました。
さて、今回はこの「ライフ」として設置されたカードが、ダメージを受けた時に「どこへ行くのか?」という問題について深掘りしていきます。
カードカウント方式を採用しているTCGは、ダメージを受けたライフカードの処理方法がタイトルによって異なります。例えば、そのまま墓地(捨て札置き場)へ行くものもあれば、手札に加わるものもあります。比較してみましょう。
悩んだ私は、Hex Codexのコンセプトに立ち返って考えました。
Hexが目指すのは、誰もが自由にデッキ構築を楽しめること、そして快適なプレイ体験です。
まず、A案(墓地)は早々に除外しました。序盤に猛攻を受けてライフを失い続けると、何もできずに負けてしまう、という展開が起こりやすくなります。それは「快適なプレイ体験」とは言えません。ユニオンアリーナのように、「条件付き(トリガー能力)で手札に加わる」という、A案とB案のハイブリッドも検討しましたが、それも諦めました。勝敗に直結する要素に運が絡むのは、プレイ感を損なう可能性があったためです。
次に、C案(リソース置き場)は、ダメージが「確定リソース(マナ)」になるため、ゲームの展開をやや加速させすぎ、大味にしてしまう懸念がありました。なのでこれもボツです。別の機会に語りますが、「プレイ感」のいいTCGを作るにあたって、ルール等によるゲームスピードの繊細な調整は不可欠です。C案はその障害になる恐れがありました。
最終的にHex CodexはB案(ライフが手札へ)を採用しました。B案とC案の決定的な違いは、ダメージによって得られるものが「選択肢(手札)」か「確定リソース」かという点です。逆転の駆け引きを生みつつ、プレイヤーが思考を介入させる余地もあるB案の方が、Hex Codexの目指す姿に合致すると判断しました。
しかし、このB案には「ゲームの硬直性(攻撃渋り)」という大きなデメリットがつきまといます。 攻撃側は常に「攻撃して相手の手札を増やすリスク」を抱えなければなりません。
当初、私はこの「攻撃渋り」の問題を、基本ルールをいじることで解決しようと悩んでいました。B案を採用しつつ、攻撃をためらわないような別の基本ルールを追加する……例えば、「攻撃したらカードを1枚引ける」などです。
しかしそれはゲームを不必要に複雑化させ、ルールの簡潔さを損なうだけでした。
ある時、私は気づきました。 すべての問題を「ルールのレイヤー」で解決する必要はない。 基本ルールが持つデメリットは、「カードプールのレイヤー」で相殺すれば良いのだ、と。
Hexの基本ルールはB案(ライフが手札へ)を採用します。これは「面白さ(逆転性)」を担保するためです。 そして、それによって発生する「攻撃渋り(ゲームの停滞)」という問題に対しては、カードプール側で対策を講じます。
具体的には、
これらを意図的に、多く組み込むのです。 こうすることで、基本ルールは簡潔なまま「面白さ」を維持し、その副作用である「快適さの損失」をカードデザインで打ち消すことができます。
法則2――ルールのレイヤーで解決できない問題はカードプール(カード効果)のレイヤーで解決する。逆もまたしかり。
すべてをルールで解決しなくていい――言い換えれば完璧なルールなど作れないと気付けたこと。これはかなり重要な気づきだったと思います。
さて、このルールはゲームの展開速度にも影響します。次回は、TCGの「快適なプレイ感」に直結する「ゲームスピード(想定終了ターン数)」について語っていきます。それではまた。
Hex Codex製作者 A