
ようこそ。そして初めまして、完全無料個人製作TCG『Hex Codex』の製作者、Aです。
世間は今、TCG(トレーディングカードゲーム)ブームを迎えています。その勢いは凄まじく、日本を代表する玩具メーカー・バンダイでは6種類、タカラトミーでも5種類のTCGが現在販売されています(令和7年11月現在)。さらに最近では有名VTuberグループにじさんじのTCGや、世界的な人気を誇る映画ハリー・ポッターシリーズのTCGが制作発表されるなど、その勢いは留まることを知りません。
現在、継続的な商品展開がなされているTCG――つまり、直近1年以内に新規パックの販売などが行われているタイトル――は、日本国内だけでも優に40種類を超え、おそらく50種類に迫る勢いです。なんともはや、ですね。
正直に告白すると、Hexはこのブームを見越して企画されたものではありません。
私がHexの原型を創り始めたとき、その動機は個人的な3つの理由だけでした。記念すべき第一回目のコラムでは、その誕生のきっかけについてお話させてください。
昨今のTCGは、魅力的なカードが次々と登場する反面、プレイヤーにとっては「カードが高い」「全て揃えるのが難しい」という金銭的な負担がつきまといます。また、せっかくデッキを組んでも、レギュレーション落ちやスタン落ちなどで、愛着のあるカードが使えなくなることもあります。もちろん、これらはゲームを新鮮に保つための必要な仕組みであり、文句を言うつもりは毛頭ありません。(特にレギュ落ちは商業上仕方ないとは思います)
しかし、もし「全てのカードから最適解のデッキを自由に構築する楽しさ」や「様々なデッキタイプを気軽に試す喜び」を、誰もが等しく享受できるゲームがあったら、どれだけ素晴らしいでしょうか。
Hex Codexは、その問いへの一つの回答です。当サイトで提供予定のカードデータは完全無料で、印刷した紙を、台紙と共に市販のスリーブに入れるだけで遊べます。もし罷り間違って人気になって、将来的にカード販売を行うようなことがあっても、レギュレーション落ちを設けないことと「プロキシ(代用カード)での公式大会参加を可能とする」というルールを設けることを、この場でお約束します。

私はある人気TCGを遊んでいた時、ある問題に直面しました。それはシャッフルです。
デッキ枚数は60枚。大切なカードでスリーブも二重にしていましたから、はっきり言って分厚かったんです。不器用な私にとって、デッキを完璧にシャッフルするのは至難の業でした。プレイヤーとして「シャッフルしづらい」という問題は、ゲームの快適さを損なう深刻な問題です。
「自分がTCGを作るなら、デッキは40枚にするのにな」
この小さな気づきから「他にも自分がTCGを作るなら、こうしたいという部分がいっぱいある!」という連鎖的な閃きが生まれ、Hex Codexのルールやシステムが構築されていきました。まあ、そうやってルールを考案・整備していくうちに「あるルールの不便さや不快さは、それが生み出す便利さや快感とトレードオフである」ということにも気づいたのですが、それはまた今度お話しします。
そして最後に、私を突き動かした決定的な動機として、『カードゲームうさぎ』という漫画作品との出会いがあります。
この作品は、作者のワタルさんがTwitterで連載している、趣味としてのカードライフを描いた漫画です。私が特に好きなのは『エピソード・ライ太』で、その中でもキバさんの『ボスラッシュ3人抜き』の場面です。あの話には、カードゲームの面白さである戦術・戦略、読み合い、そして何より運の要素がこれでもかと詰め込まれており、とにかくアツかったですね。
さらに、この架空のゲームがクラウドファンディングを経て(しかも総額1億円オーバー!)実際に商品化されたという事実は、私にとって最大のトリガーとなりました。この事実が、それまで漠然としていた「自分もオリジナルのTCGを作って世に出せるのではないか」という衝動を、具体的な行動へと突き動かしたのです。
この作品から受けた情熱と衝動こそが、『Hex Codex』を誕生させた最後の、そして最も大きな後押しとなりました。非常に面白い作品ですので、是非皆さんも読んでみてください。
Hex Codexは、こうした個人的な動機から生まれた作品です。
この『開発秘話』コラムでは、開発の裏話やカードデザインの意図、そして時に他TCGの考察なども交えながら、皆さんとカードの世界を深く楽しんでいきたいと考えています。
次回からは、いよいよ具体的なルールや、ユニークなシステム、開発で苦心した点などについて深掘りしていく予定です。このサイトが、そしてこのゲームが、あなたのTCGライフをより豊かにする一助となれば幸いです。
ぜひ、今後の展開にもご期待ください!
Hex Codex製作者 A